震災で気づかされた使命感
(有)南山デイリーサービスは「お客様に安心・安全な商品を心のこもったサービスと共に提供し、お客様の健康と笑顔を追求する」をモットーに、乳製品の宅配事業を展開。八戸、三沢、十和田地域で約60名のスタッフが配達業務に従事しています。
平成15年の会社設立から順調に伸び続けていた業績が横ばいになった時、「もしかしてお客様と向き合えていないのではないか?と考え始めたんです。」と南山社長。「アンケート調査を行った結果、お客様の約7割が高齢者だということもあり、時代の背景を見据えた新たなサービスを提供していかなければならないと考えていました。」
そんな最中に起きた東日本大震災―。「当時は、商品を配達したくても供給がストップしてしまい、お届けするモノが手元に入ってこない状態でした。」商品がなければ配達も不可能でありながら、スタッフは利用者の家を1軒1軒訪ね、安否確認を続けたといいます。利用者との距離も近くなったその体験を通して、「自分たちの仕事は地域にとって必要な仕事だということを、スタッフ一人ひとりが実感し、そんな思いが新サービス考案へとつながっていきました。」
「採択」の意味
「牛乳屋と聞くと“朝が早い”と思われがちですが、私たちはお客様と顔を合わせることができる日中に配達をしているんです。普段からお客様との会話は積極的に行うようにしていました。」新たなサービスは、このコミュニケーションの延長線上にありました。高齢の利用者に対し、定期的に配達に伺った時にお声掛けをして、それを日報にまとめ、万が一の場合は行政機関に報告をするというシステムの“お元気確認サービス”。地域包括支援センターへの連絡体制も整えました。
もう一つのサービスは、アンケート結果がヒントになりました。「交通手段がなかったり、体力の低下といった理由で買い物に行くのが難しいという声です。予め注文を聞いて、買い物を支援するサービスはどうかと考え、地域のよこまちストアさんにお話したところ商品提供を快諾していただきました。」お客様の声に耳を傾けたこのサービスは“ふれあいマーケット”と名づけることに。
スタッフ同士が意見を出しあいサービス内容を検討し始めた時、商工会議所の紹介で元気チャレンジのことを知った南山社長。「内容を詰めていくと同時に、プレゼンの準備も始めました。決められた時間で、自分たちの思いを全部伝えきるには相当の準備が必要でした。」と、当時を振り返ります。「プレゼンでは予想外に厳しい質問もされたのですが、思いの丈をそのまま話しました。採択していただけたことで、私だけではなくスタッフ全員、自分達がやろうとしていることは価値がある、認められたという自信となって、ますます意欲的にサービス実現に向かうことができました。」
「お役様の顔が見える仕事」へのこだわり
後押しを受けたことでサービス実現に向け本格的に始動。各所との連携を確たるものとし、間違いのない連絡網を作り上げて、まずは“お元気確認サービス”が走り始めました。チラシをつくり、サービス開始の案内を始めるや否や、約60件の申し込みが。高齢者が利用するデイサービスセンターなどにもチラシを置いたことで、サービスを受けたいがために宅配を申し込むケースもあったといいます。
高齢者でなくても利用できる“ふれあいマーケット”は、独自の商品リストを作成し、その中から注文を受けるスタイル。「とても助かる」という声が多く寄せられているようです。
「高齢化社会と言われる昨今、こういった取り組みの必要性を強く感じています。特に私たちは、地域の方をお客様にしていますし、ただモノを届けるということではなく、お客様の顔が見える仕事をしていきたいと考えています。」
最近新たに、管理栄養士監修による健康志向の料理レシピを提供する“レシピ宅配便”サービスも始めました。「サービスにゴールはありません。時代やお客様のニーズに合わせ、新しいサービスを提供していきたいと思っています。」社会や地域の役に立つサービスと顧客満足度向上のため、これからもお客様の声に耳を傾け続けます。
企業プロフィール
- ■社名 有限会社南山デイリーサービス
- ■代表者 南山 泰政
- ■設立年 平成15 年
- ■所在地 八戸市小中野二丁目6-19
- ■電話 0178-44-3218
- ■企業URL http://www.minamiyama.co.jp
- ■従業員数 77 名
- ■資本金 600 万円
- ■採択年度 平成23 年度下期
- ■事業内容 社会課題である高齢者生活支援活動を通じた経営革新事業(ソーシャルビジネスと既存ビジネスを融合した経営革新への取り組み)