EV(Electric Vehicle:電気自動車)時代到来
ハイブリットカーが普及し、エコカーという響きも耳に馴染んできた昨今。東北自動車㈱の中里社長は5年程前、「いずれ動力を電気でまかなう電気自動車が、本格的に市場に出回る。」と、業界の動向を一早く読み取り、その“来るべき時”に備え、EVについての情報収集や整備技術習得に取り組み始めました。EV普及活動を行う「日本EVクラブ」の研修会やフォーラムなどに参加して、3人のスタッフと共に知識を深めていく中で、「ノウハウを会社のスタッフ全員で共有するため、自分たちで社内研修用のEVを作ってみようと思ったのがきっかけでした。」
既存のガソリン車をEVにコンバート(改造)する―。エンジンやガソリンタンクなどを外すかわりにバッテリーやモーターなどを取り付け、3ヶ月かけて、鉛バッテリーを搭載した『コンバートEVミラ』を製作。平成22年夏、コンバートEVとしては東北で初めてナンバーを取得したことで話題になりました。
実用車製作へ ~新たな産業に挑む
3年掛けて出来上がった商品を手に、いよいよ販売の新境地へ。「そんな時にこの元気チャレンジ事業を知りました。商品のPR や販路開拓に使える助成金があるのは心強かったです。」採択後は、助成金をフル活用して首都圏の物産展や商談会に参加。「必ず試食をしてもらうようにしていました。説明をする前に、まずは食べてみてという感じで。」一食・・は百聞にしかず―、舌が肥えているバイヤーの納得した表情を見て、「販路さえ確保できれば、絶対に売れる」という、これまで持っていた商品に対する自信が確信に変わりました。
県内の主要観光施設や道の駅にも積極的に営業に出掛け、店頭においてくれる店舗が着実に増えてきています。「この商品は保存性に優れ、軽いということもありお土産にも最適なんです。」味わいはもちろんのこと、商品スペックも認められ、初年度は生産した18,000個が半年で完売。早くも40,000個分の菊を確保したとか。「フランス料理店からも注文をいただきました。黄色の食品がフランス料理界にはないそうで、重宝しているみたいです。」と、意外な方面からも嬉しいオファーが続いています。
人味育成こそが地域活性化に
晴れて公道デビューと思いきや、「実はこの車、ナンバーを取得せずに、地元の高校生や大学生を対象にした『EVスクール』に活用するため研修用に作り変えました。」これまでは『コンバートEVミラ』を教材として、EVの基礎から応用・コンバート方法を伝授してきましたが、リチウムイオンについても学ばせたいという思いがありました。「重要になるBMSを『バッテリーを制御する』と言葉で説明しても、目に見えないと理解しがたい。だからモニターにつないでシステムをビジュアル化することにしました。」その上、140頁におよぶ教科書も作成。「人材育成は何よりも大事です。コンバートEV製作に取り組むにあたり、スタッフは相当勉強しました。助成を受けたことで、その知識や技術を成果物として残せて、その車がまた、次世代を担う人たちの育成につながっていくということは、とても嬉しいことです。」
苦労して習得したノウハウを公開することに、商売的リスクは感じませんか?の問いに、「ない、ない、ない、ない。」と勢いよく答えた中里社長。「よそが導入したら、またウチも頑張るだけ。そうやっていくことで、業界が盛り上がって行くわけですから。特に若い人たちには、新しいことに興味を持ってもらい、将来地域を盛り立てて欲しいです。」と、出し惜しみすることなくオープンにしていくつもりです。
見聞を広げるため、新聞や雑誌で気になる人や記事を見つけるとすぐさまアポをとり、全国どこへでも話を聞きに行くという探究心・向上心に溢れた中里社長は、現状に満足することなく、すでに次の展開を思案中です。「バッテリーも充電できなければ使えなくなります。今後は再生可能エネルギーである太陽光を利用して発電・蓄電し、『エネルギーゼロ自動車』につなげていきたいと考えています。」自社の発展と地域活性化のため、今日も前に突き進んでいます。
企業プロフィール
- ■社 名 東北自動車株式会社
- ■代表者 代表取締役 中里 明光
- ■設立年 昭和45年
- ■所在地 八戸市沼館1-10-40
- ■電話 0178-45-7887
- ■従業員数 18 名
- ■資本金 2,000万円
- ■採択年度 平成23年度上期
- ■事業内容 リチウムイオン電池搭載コンバートEVの試作実証とビジネスモデルの検討