新商品にかける熱き思い
企業にプログラマーなどを派遣している㈱アーク。「最初はお手伝い程度で、開発に力を貸しているだけでした。」電子機器の知識はあるものの、シュレッダーに関する知識はほぼ皆無。現行品をサンプルとして、その設計を分析しながら、試行錯誤。確実なデータをとるためには時間を要し、「技術力もさることながら、根気が必要な作業でした。」と振り返る。人手や開発費のやりくりに苦労しながらも、「走り始めた以上は後戻り出来ない。全てが無駄になりますから。」その一心だったという。
㈱アークが取り組んだのは、シュレッダーコントローラーの開発。モーターを安全且つ効率的に作動させるための要となるシステムだ。自社で回路設計から基板設計、試作を行い、国内で圧倒的シェアを誇るシュレッダーメーカーのユニットに採用された。 「他社の現行品より二回り小さく、低コストに抑えられる設計です。」と橋端社長。着手から3年の月日をかけて、ようやく完成した。
情報漏洩防止のためには欠かせないペーパーシュレッダー。需要が増すとともに求められるのは、安全性や作業効率、電力消費など、高品質高性能な製品。 しかし同社において、シュレッダーコントローラーはもとより本格的な電子機器の開発は初めてのことであり、「シュレッダーに必要な搭載機能すらわかりませんでした。」と、最初は手探りの状態。 メーカーからの希望を一つひとつ聞き入れ、設計を見直してはテストを繰り返したという。 負荷がかかることでむやみにモーターが停止しないか、逆に紙詰まりや扉の開閉など危険を察知して停止すべき時に停止するかなど、搭載する機能の数だけ、条件を変えながらテストを実施。 「コピー用紙をどれだけ裁断したかわかりません。」その量は、事務所が埋め尽くされる程だったとか。「他社のコントローラーと比べて性能が見劣りしないか、何度もテストを繰り返して規定をクリアしました。」
今回の開発により業界最大手メーカーとの取引が実現し、自社発展に向け大きな扉を開くこととなった。
「メーカーが新たな取引先を探している」という情報のもと、コントローラー開発に動く企業が現れる中で、「もともと弊社は、取引をしている実装業者からの依頼で開発に手を貸していました。 しかし時間とコストがかかることを理由に、開発を断念した経緯がありました。」開発に踏み切っていた企業は何社かあったものの、同じく開発費の問題から手を引く企業が相次いだ。 しかし、現行品に比べて高性能低コストのコントローラーを開発することが出来れば、業界最大手メーカーとの取引の道が拓け、大きな利益につながる―。 「その後、直接メーカーから打診を受けたこともあり、弊社が引き続き開発を進めることになったのです。」
平成22年、長い道のりとなるコントローラー開発事業がスタートした。
「必要なデータをとって、安全性や耐久性、性能などを立証しなければならないので、想像以上に時間とコストがかかりました。 トライ&エラーを繰り返す中で、ようやく形が見えてきた頃、「開発費がかさみ、完成間近にして継続が困難な状況に陥りました。 しかしここまで来て開発を中断するわけにはいかず、助成制度の活用を模索していたところ、元気チャレンジを知りました。」申請・採択を経て、事業を再開。「助成金は基板製作の加工費などに使わせていただきました。」
これまでの苦労を水の泡にはしたくない―。「それだけは避けたかったので、元気チャレンジがあって助かりました。助成がなければ、開発は実現しませんでしたから。」
開発したコントローラーは中国の工場で生産されており、今後は月800~1,000台ペースでの発注を見込んでいる。 「ただ品質の安定性を考えるなら、やはり日本国内での生産が理想です。地元企業への発注を考えているところで、近いうちに実現させたいと思っています。」地元の企業を活用することは、地域活性化にもつながると考えている。
新規市場に参入することが出来た最大の成果は、大幅な利益アップ。「それだけではありません。 これまで弊社になかった技術を得ることが出来ました。」開発したコントローラーは高く評価され、同じメーカーで扱っている他製品の開発依頼も舞い込んできているとか。 「今回培った技術やネットワークは、弊社にとって大きな財産です。」
次のステップに向けて、今新たな一歩を踏み出した。
企業プロフィール
- ■企業名株式会社アーク
- ■所在地八戸市一番町1-8-17
- ■TEL0178-32-0209
- ■URL–
- ■代表者名橋端 孝幸
- ■従業員数6名
- ■資本金50万
- ■採択年度平成24年上期