新サービスにかける熱き思い
既存事業と女性の働き方を考えた取り組みのマッチング。発想の原点は「私自身が17年間務めた会社を辞めた時に、ぶつかった壁でした。」という栗谷川さん。自らも主婦であり、また野菜ソムリエの資格を持ちながら、その資格を活かしきれていないと感じていたことがあるという。「チャレンジだけでなく、いろんな発想を持ってチェンジしていける女性を求めていきたい。」
青森の新鮮な農産物を販売する「ひだまりマルシェ」が首都圏各地でお目見えしている。扱っているのは、鮮度や品質に問題はないものの形が不揃いだったり色がまばらだったりする規格外の野菜や果物。開催日に合わせて、採れたての農産物が青森から直送される。その魅力や作り手の思いを熱心に伝えているのはフードコーディネーターや野菜ソムリエといった食に関する資格を持つ首都圏在住の女性たち。アンバサダーとして採用後、自分たちのペースでマルシェを開催している。
規格外野菜の新たな販売チャネルともいえるこの仕組みを構築したのは、県南地域を拠点に地元野菜を中心に提供するレストランなどを運営しているノースビレッジ合同会社だ。主に規格外野菜の活用を軸に、生産者と消費者をつなぐ事業を展開している。代表の栗谷川さんは、「女性の働き方の観点から生み出されたのがひだまりマルシェ。それぞれのペースで、自分が持つ資格を活かすためのきっかけになれば。」と、事業を立ち上げた背景を語る。現在までに7人のアンバサダーが誕生し、個性豊かなマルシェを開催している。
結婚などを理由に職場を退職した女性が、家事や育児によって働き方が制限されるのは珍しいことではない。「せっかく資格や知識があるのに活かせないのはもったいない。それぞれの事情がある中でも、その人なりの働き方があるのではないか。」という思いと、これまで取り組んできた事業がリンクした。
基幹産業である農業を盛りたてることこそが地域のにぎわいにつながるという理念のもと、「規格外」という眠っていた資源の活用を図ってきた同社。都内飲食店へ業務用食材として提供したり、オンラインショップでの販売実績もあり、「固定価格で出荷できる体制は整っていました。物流も問題なし。あとは実際に販売する人が、私たちと同じ思いを持って取り組んでくれるかどうか。」ただ販売するだけではなくアンバサダーとして、野菜の魅力を伝えて欲しいという思いがあり、「応募者を面接したうえで選抜し、こちらに出向いて農業体験をしていただきました。」気候や風土、文化を実際に体感してもらいながら、県産農産物をよりよく知ってもらう試みも行った。
アンバサダー募集のWebページ制作に助成金を活用。また、フード系サイトにバナー広告を掲出したことで、効率よくターゲットを獲得することができたという。「都内で行った面接にかかる費用や、農業体験に来てもらう際の旅費にも助成金を使いました。」事業を進めるうえで一番重要と考えていた「同じ思いを持って」というこだわりをとことん追求できたようだ。助成を心強く感じる一方で、「助成金をいただく事業は社会との約束。より真摯に取り組みました。」と語る。
「今は種まきの時期。大事に育てて花を咲かせたいと思います。」という栗谷川さん。ひだまりマルシェの取り組みを継続しながら、地元での地産地消にも力を入れていくという。「目標は産直併設型農家レストランのモデルをつくり、システム化することです。県内各地にそういった施設ができれば観光の観点からもおもしろいですよね。」その仕組みができれば、ひだまりマルシェに転用することも可能。首都圏に、週末限定の「ひだまりカフェ」がオープンすることになるかもしれない。
企業プロフィール
- ■企業名ノースビレッジ合同会社
- ■所在地三戸町川守田関根川原12-17
- ■TEL0179(22)3339
- ■URLnovin.jp/
- ■代表者名栗谷川 柳子
- ■従業員数12名
- ■資本金600万円
- ■採択年度平成24年度下期