新商品にかける熱き思い
地域住民を困らせていた野焼きと、農家が抱える廃棄物処理の苦悩。資源を生み出すことで問題の解決を目指した白川社長。「波及効果を感じてもらえるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、助成金を活用して地域の問題に取り組んだ以上、中途半端には終われない。このバイオマス燃料を、地域ブランドとして育てていきたいと考えています。」まだまだ道半ばと考えているようだ。
津軽平野のど真ん中で建設業を営む(株)白川建設が、農業廃棄物であるもみ殻を原料とした暖房用燃料を製造・販売している。「ほっかほか君」と名付けられたこの商品は、地域から出るもみ殻をすり潰して10分の1に圧縮し、棒状に成型したもの。「長期保存ができるうえ、燃やした際に飛び火が少なく安全に使える。そして何より、熱量は薪や炭に劣らないため、一般のご家庭や公共施設、農業用ハウスなどでの活用を期待しています。」と白川社長。商品名は、静かに赤く燃える様を見て自らが命名し、平成22年秋から販売を始めている。
また、燃焼したあとの灰は土壌改良材として使えるということで、農業から出る廃棄物を資源にするだけでなく、さらに農業に再利用するというリサイクルが実現した。
震災以降、薪ストーブの需要が増えたこともあり、メーカーと共同してストーブ開発も行った。売れ行きも好調だという。そして現在、力を入れている次の一手は、「ドラム缶や一斗缶などがあればどこでもいつでも使える利点を活かして、非常時用の燃料セットとして売り出し始めました。」ガスや電気などのライフラインが止まった場合でも暖をとったり、お湯を沸かしたりできるセットを開発し、市町村を中心に売り込み中だとか。すでに避難所に設置した町村や自治体もあり、非常時用燃料としての認識も広がり始めているようだ。
本事業に取り組むきっかけは、「秋になると悩まされていた稲わらやもみ殻の野焼き。」という白川社長。毎年当たり前に出るもみ殻を有効活用できないかと情報を集めた。平成20年、「最初は土壌改良材となる『くん炭※』を作り始めたのですが、炭にするまでの過程で出る熱量がすごいことに気が付き、土壌改良材にする前に、暖房燃料としても活用できるのではないかと。」考え始めたという。
冬の農業ハウスなどでの実験を行い、燃料としての効果を確信すると同時に、もみ殻を圧縮して棒状に成型する手立ても突き止めた。「圧縮することでもみ殻の処理量も増えるうえ、固形燃料ならば使い易い。これで心が決まりました。」と、もみ殻の有効活用は、くん炭から固形燃料へと形を変えていくこととなった。 ※くん炭:もみ殻を燻し焼きにした炭。主に土壌改良材として使われている農業資材
助成金の使い道については、「もみ殻を棒状に成型するための機械を調達して研究したり、商品の宣伝などに活用しました。」という。開発までの工程のみならず、出来上がった商品を試してもらう「無料お試しキャンペーン」の実施など、フルに活用した。
また、「金銭面はもとより、事業推進にあたって全面的にアドバイスを頂けたことで安心して取り組むことができました。」と、元気チャレンジの活用意義を語る。「様々な情報提供によってイベントなどに出展する機会も増え、本商品の知名度を上げることができたと考えています。」
ほっかほか君が誕生しておよそ4年。商品そのもののを売り込むだけでなく、ストーブや非常用セットの開発などで販促に力を入れてきた同社。近い将来、農業ハウス用のもみ殻燃料専用燃焼装置が誕生する予定だという。「現在、東北職業能力開発大学校 青森校と共同開発に取り組んでいます。これが完成すれば、農家にも浸透しやすくなると期待しています。」と、その歩みが止まることはない。
「ただ営業力がいまいち…。商社とタイアップして、その点を補っていけたら。」と苦笑する白川社長だが、「津軽鉄道のストーブ列車からもオファーがあり、試してもらっているところです。」と明るい話しも舞い込んで来ているようだ。津軽平野で生まれたバイオマス燃料の行方に注目したい。
企業プロフィール
- ■企業名株式会社白川建設
- ■所在地中泊町大字尾別字浅井257-7
- ■TEL0173(57)2264
- ■代表者名白川 勝則
- ■従業員数29名
- ■資本金3,800万円
- ■採択年度平成22年度上期