新商品にかける熱き思い
安全のために開発した商品で事故が起きれば、本末転倒。工学系出身の井上社長が自ら陣頭指揮をとった。「材質の選定や強度を重視した設計にこだわり、今の形にたどり着くまでに試作を５回繰り返しました。そりの部分の微妙な角度調整は苦労しましたね。」と、これまでに類を見ない商品の誕生までを振り返る。雨天時でも滑ることがないように表面にリブを施したり、気温の変化における変形具合を調査するために県内３箇所と大阪でテストを実施したりと、安全性と耐久性に万全を期したという。建設現場の労働災害を減らす一助となる自信作だ。
一般住宅から中高層ビルまで、あらゆる建設現場で必要になる「足場」の仮設工事を主な業務とするセーフティファースト㈱が、くさび緊結式足場用の安全カバー「セーフティパレット」を開発した。強度が高く、暑さや寒さによる変形の心配がないポリプロピレンで作られたパレットの下部にクリップが取り付けられた商品で、クリップを単管と呼ばれる鉄パイプにはめるだけで、足場の接合部に発生する隙間や段差を解消することができる。「パレットとクリップとの組み合わせ方は全部で８通りあり、様々な段差に対応できるようにしました。」と井上社長。長さが違うクリップを2種類開発し、パレット側の取り付け部分でも位置を調整できるようにしたことで、単管や踏板に多少のゆがみが生じている場合でも、そのズレをほぼカバーすることができるという。また、工具を使わずに単管へ装着できる手軽さも特徴の一つだ。
「すでに大手住宅メーカーでも採用されています。現場では何よりも安全が第一。業界でのスタンダード商品になってくれればと考えています。」平成26年春に販売・リースを開始してから、足場施工会社やハウスビルダーへ対する積極的なアプローチが実を結び、注文や問い合わ せが順調に伸びてきている。
青森市・弘前市にも支店を有し、年間3,000ケ所の仮設工事を請け負っている同社。安全で効率的な作業環境を提供している。
「床材間の隙間は3㎝以下としなければならないという規則があり、現場では労働基準監督署による安全チェックが行われます。隙間や段差を改善できる商品がないのかと言われていたこともあり、踏板の隙間カバーを作ることを考え始めました。」現場で働く人たちの安全確保や業界のコンプライアンスの観点から、ありそうでなかった商品開発に踏み切ることにしたという。足場の仕組みや状況を熟知しているからこその商品を目指して、井上社長を筆頭に社内でプロジェクトチームを編成し取り組んだ。
有益な情報を得るため県や地元自治体のウェブサイトをよく見ていた井上社長。構想の段階で申請し採択を得た。「助成金は、試作品の金型製作に活用しました。」安全を謳うにふさわしい商品にするために4度にわたり試作品づくりを繰り返し、安全性や使い勝手などに納得がいくまでこだわることができたようだ。
「今回の事業は弊社にとって大きなチャレンジだったので、採択されなかったら商品開発は断念せざるを得ませんでした。」モノづくりという新たな分野に踏み出せたのは、助成金のバックアップがあったからと語る。
いち早く実用新案登録も済ませ、開発した商品を世に送り出した後は、商品管理や販売促進の業務にあたる社員を採用し、雇用にも貢献している。
県内のみならず県外へも出向いて営業活動に力を入れてきたことで、「着々と販売実績も増えてきています。平成27年度からは代理店契約で全国展開を狙います。」とのこと。
そして、「メーカー機能を持つことになったからには、活かしていきたい。今回開発した「セーフティパレット」は２タイプの足場に対応できますが、違うタイプの足場に対応できる安全カバーの開発を検討しているところです。それができれば、全タイプの足場をカバーできますから。」と、新商品開発にも意欲的。メーカーとしてもますますの発展が期待できそうだ。
企業プロフィール
- ■企業名セーフティファースト株式会社
- ■所在地八戸市是川二ツ屋6-60
- ■TEL0178-85-0433
- ■URLhttp://safety1st-coltd.com
- ■代表者名井上 美壽穂
- ■従業員数91名
- ■資本金995万円
- ■採択年度平成25年度上期
