新商品にかける熱き思い
今後の事業展開を左右する情報収集や調査を担当してきた工藤さん。新事業創出の可能性が見えた時、「新たな仕事が生まれるということは、人員が必要となり雇用も生まれる。地域や業界の活性化につながります。」という思いが、モチベーションアップにつながったという。
青森市に拠点を構える医療機器販売会社（株）トム･メディック。同社は卸業だけでなく、医療現場のニーズに即したオリジナル製品を生み出すメーカーとしても躍進している。医療機器の充電やベッドサイドでの電源確保をスマートに実現する連結型コンセントバーや、コードやチューブ類をまとめるバンドなど、医療現場における環境や従事者に配慮した製品が主だ。
平成25年から開発に取り組んだ「輸液ポンプチェッカー」は輸液ポンプが正常に作動しているかを点検するための機器。これまで輸液ポンプの点検はメスシリンダーや圧力計を用いて人の手で行われていたが、点検業務の風景が劇的に変化する製品が誕生した。
施設が大きくなればなるほど輸液ポンプの数も増え、その分点検にも時間がかかる。同製品は、4台の輸液ポンプを同時にチェック出来る仕様になっているため、効率良く作業を進めることが可能だ。同社メディカル・イノベーション事業部の工藤さんは、「時間短縮だけでなく、これまでのように点検中に人が張り付いている必要はありません。」と、その最大の特徴を語る。
医療機器の保守点検が義務化された今、医療現場に蔓延している人出不足の解消や、業務の効率化に貢献する製品として、展示会などでも期待の声が大きいようだ。
医療の高度化により、医療機器の使用は疾病の診断・治療などに必須の要件。診断の精度を向上させ、治療面でも大きく寄与しているが、それは医療機器が常に正確に作動することが大前提。「近年の医療機器の高度化とその普及によって保守点検業務の量と質が変化し、これらの作業を外部の業者に委託するケースも増えてきています。」同社においても、大手医療機器メーカーと連携して、輸液ポンプやシリンジポンプの点検業務を請け負ってきたという。
そんな中、「時間短縮と労力軽減の2つを実現するチェッカーの試作機を作ったのが事業の始まりです。」自社で請け負った点検業務の際に使用し性能評価を実施したのち、製品化を決定。省スペース型へ移行させる段階で、元気チャレンジに申請した。
助成金のほとんどは、医療機器や病院・福祉設備機器が一堂に集う「HOSPEX JAPAN（ホスペックスジャパン）」といった展示会に出展するための経費として使われた。「展示会への出展は、情報収集を幅広く行うのが最大の目的でした。メンテナンスを外部委託したいのか、自ら行いたいのか、地域性の問題はあるのかなど、実際のニーズや状況を把握することが出来ました。」と、今後の事業展開を決定する上で重要な調査活動になったようだ。
「現場の声としては、人手や時間が足りないため点検業務は外注したいという声が多かった。」という調査結果が出たものの、「メーカーがカバーしきれていないのが現状。青森を含めた北海道・東北エリアには多くの市場があるので、メンテナンスセンターという新事業は高い収益性が見込めるものと考えられます。」と、メンテナンスセンターの運営にかかるコストや業務フローのシミュレーションを、すでに始めているという。「まずは弊社において既存顧客を中心としたメンテナンス事業を行い、モデルケースとして事業スキームを練り上げていきたいと考えています。」新製品の開発によって見えた新たな事業分野を、先陣を切って開拓していきたい考えだ。
企業プロフィール
- ■企業名株式会社トム・メディック
- ■所在地青森市大字滝沢字下川原14-1
- ■TEL017(737)0030
- ■URLhttp://www.tom-medic.com
- ■代表者名舘山 光浩
- ■従業員数17名
- ■資本金2000万円
- ■採択年度平成26年度上期
