新商品にかける熱き思い
これまではヒバの香りも成分の一つとして考えてきたという大見社長。「最大の特徴ともいえる香りを消すというのが今回の挑戦。吉と出るか凶と出るか、楽しみだった。」と振り返る。もちろん、ヒバの良さは香りだけではないと知っているからこそ選んだ道。「青森ヒバの素晴らしさを全国に広げていきたい。」と意気込む。
日本三大美林の一つで青森県の木でもある「青森ヒバ」から抽出した有効成分を配合したヘアケア商品やスキンケア商品を開発・販売している化粧品製造メーカー・ヒバ開発(株)。同社が新たなチャレンジとして取り組んだのが、「ヒノキチオール」を使った旧表示指定成分無添加の日焼け止めクリームの開発だ。
天然ヒバの原木から抽出するヒノキチオールは、抗菌・消炎効果を始め、細胞賦活効果や美白効果があり、美容業界のみならず医療業界からも注目されている成分。そのヒノキチオールを中心とした植物由来エキスを数種類配合しているほか、プロテオグリカンやヒアルロン酸などの保湿成分を加え、紫外線カットと保湿の両方を実現する商品が完成した。
もう一つの大きな特徴は、ヒバの香りがしないことだ。天然ヒバといえば、最大の特徴はなんといっても香り。「和のアロマ」や「癒やしの香り」として取り上げられることも多いが、「顔につけるには香りが強すぎるとご指摘をいただいたので、本来の香りを取り除いて、グレープフルーツの香りに仕上げました。」と大見社長。「本来はウリであるはずの香りを除いても、その他の有効成分が際立つ商品です。」と自信を見せる。日焼け止めクリームの需要が増える夏シーズン(平成28年)から、本格的に販売を開始する予定だ。
「日焼け止めクリームの刺激で肌荒れをおこす方も多く、ヒバを使った日焼け止めクリームが欲しいというお声をいただいたのがきっかけです。逆に既存のクリームを使っている方から、日焼け止め効果があればいいのにという声も聞いていました。」これまでも約20年に渡って、ヒバにまつわる化粧品の製造から販売までを一貫して行ってきた同社。容易なチャレンジだとも思えるが、「顔につけるものほど、ヒバの香りを敬遠する人が多いということも独自の調査でわかっていた。」ことから、これまででは考えられない「ヒバの香りがしない商品」にすることが絶対条件だった。 「そのためには、これまで商品に使用していた『ヒバ油』ではなく、香りが出ない『ヒノキチオール』を配合するしかない。しかし、自社で抽出する体制を整えるとなると莫大なコストがかかるため、原料メーカーを通して調達することに。」その方針が固まったところで、元気チャレンジに申請し、採択を得た。それを機に同社にとってある意味では初となる化粧品の開発が加速していくことになった。
薬剤師の指導のもと処方設計をして試作を繰り返し、PAとSPF(紫外線の防止効果)の検証やテクスチャーのモニター調査を経て、構想から2年、顧客からのリクエスト商品が誕生した。
試作段階で使う材料の調達や効果検証、モニター調査、商品が出来上がってからの販促ツールなどに助成金を活用した同社。「商品開発にはとにかくお金がかかります。」数々の商品を生み出してきた大見社長が語る。「特に今回は、日焼け止めクリームという特性上、PAとSPFの数値を検証する必要があった。自社では検証出来ないので、専門機関に頼らざるを得ない。コスト面を考えると、中小企業ではなかなか踏み切れない高いハードルです。検証が出来なければ、この商品に価値はないのも同然。助成金がなければ、この商品は誕生していなかったと思います。」と、助成金が大きな力となったようだ。
商品が完成した平成27年の夏には、既存の販売チャネルを活用し先行販売を行った。「敏感肌層からは、肌荒れなどのトラブルがなくなったという嬉しいご感想もいただいております。」と、手応えを感じている。
上々の評判を受け、「アウトドアスポーツを楽しむ方々にも注目してもらいたい。これから新たな販路を開拓していく予定です。」これまでのターゲット層である自然化粧品ファンのみならず、顧客の幅を広げたい考えだ。
「今回の商品開発で新たな技術を手に入れた。この経験を活かし、ヒバ以外の香りをブレンドした様々なアイテムの商品化を考えています。」と、すでに次の計画が進行していることも匂わせる。新たなチャレンジの成功は、同社の新たなステージのスタートとなったようだ。
企業プロフィール
- ■企業名ヒバ開発株式会社
- ■所在地大間町大間字大間平37-21
- ■TEL0175(37)4711
- ■URLhttp://www.aomori-hiba.com/
- ■代表者名大見 義紀
- ■従業員数5名
- ■資本金1,000万円
- ■採択年度平成25年度下期