新サービスにかける熱き思い
本事業は前任者が手掛けたものだが、衰退する各地の商店街を目の当たりにしてきた田澤事務局長。「商店街の良さは人と人とのふれ合い。商機能のみならず、防犯の側面からもなくてはならないもの。」と、商店街を地域コミュニティの中心と考え、その重要性を訴える。
豊かな地域づくりや中小企業の発展のため、経営相談や情報発信といった活動を行っている各地域の商工会。外ヶ浜町商工会でも、町内の中小企業の課題を克服し、様々な角度から企業力を向上させる取り組みを行っている。
今回取り組んだのは、地元商店の活性化だ。蟹田地区には古くからの商店街があり、平舘地区・三厩地区にも「顔が見える商売」をモットーとした商店がある。
地元商店をもっと活用してもらおうとまず取り組んだのは、町民を対象としたスタンプラリー事業だ。大売り出しなどの一過性の集客ではなく、リピート客の獲得を意識した。
参加者に偏りがでないよう、スタンプラリーの台紙はハガキで作成し、「配達地域指定郵便物(タウンメール)サービス」を利用した。これにより、町内の全戸に台紙が届くことになる。
内容は、設定された期間中に町内の計32店舗において千円以上買い物をすることでスタンプを獲得し、異なる店のスタンプを3つ以上集めると、豪華景品が当たる抽選会に参加出来るというもの。各地区で異なるスタンプを用意し、絵柄の数によってはダブルチャンス、トリプルチャンスとなる仕組みを設けた。住んでいる地区だけでなく、他地区の商店も利用してもらうのが狙いだ。
「用意した景品があっという間になくなりました。」と田澤事務局長。抽選会当日は行列が出来るほど賑わいをみせ、参加者にも喜ばれる催しとなったようだ。
また、消費者へ向けたニュースレターや折込チラシの発行など、地域に密着した商店づくりを進める取り組みも行ったほか、町外の人にも積極的に商店を利用してもらおうと、商店の場所をマップに記したガイドマップの作成にも着手。もともと作成済みだった蟹田地区の商店街マップを参考に、他2地区分を完成させ、来訪者が歩いて買い物が出来る体制を構築した。また、観光で訪れた人たちが手にとりやすいよう、観光名所や特産品などを一緒に紹介する工夫も施した。各地区のガイドマップは、駅や産地直売施設、各店舗で配布している。
商圏人口の減少や大型店との競合、インターネットの普及により、業況が厳しくなる一方の商店街。全国的に見ても消滅の危機に陥っている商店街も珍しくなく、地域が抱える課題として取り上げられることも多い。同地域も例外ではなく、「街なかに賑わいを創出したいと常に模索してきた。」という同商工会。「平舘地区・三厩地区には商店街がないため、団体活動が出来ない。活気を取り戻すためには、3地区が一丸となって取り組める事業が必要でした。」
地元商店の活性化のためには、地元町民の関わりが欠かせない。普段は商店を利用しない層にもアプローチが出来て、なおかつ平等に参加出来る方法として、指定した地域に郵便物を届けることができるタウンメールサービスに着目。助成金のサポートを受けて、「商業者と消費者」の相互メリットを実現する事業を展開していくことになる。
助成金を活用し新たな事業に取り組めたことで、「コミュニケーションを生む結果につながった。」と語る田澤事務局長。「商業者の意識が変わってきた。自分たちが住む地域をもっと盛り上げていこうという気運の醸成にもつながったよう。
次年度は自前の費用でもやるべきだという声が多くあがっています。」と、当初の目的であった「商業者と消費者」だけでなく、「商業者同士」のコミュニケーションにも良い影響を与えたようだ。
商店街を取り巻く厳しい環境が抜本的に解決されたわけではないものの、この地域において「商店街を利用する回数が増えた」という結果が、県の調査により明確な数値によって示されたという。
「今後はますます地域が高齢化になる。」と危惧しながらも、「購入商品の無料配達など、これまでも個々の努力で地域に即したサービ スを提供してきましたが、今後は一丸となって推し進める予定です。」時代に合った顧客ニーズを把握し、これまで以上にかゆいところに手が届くサービスに力を入れながら、成功裡に終わったスタンプラリー事業も継続する予定だという。
企業プロフィール
- ■企業名外ヶ浜町商工会
- ■所在地東津軽郡外ヶ浜町字蟹田159
- ■TEL0174(22)2441
- ■URLhttp://www.aomorishokoren.or.jp/shokokai/sotogahama/
- ■代表者名野村 甚左衛門
- ■採択年度平成26年度上期