有限会社大鰐振興

異業種事業成功のカギは「資源活用と専門家からのアドバイス」代表取締役 宮腰 浩一さん

異業種参入~意外な着眼点

(有)大鰐振興が運営する「おおわにシャモロックファーム」で飼育されているのは青森県地鶏・青森シャモロック。抗菌性飼料添加物を一切使用していない専用飼料とおいしい水、ストレスのない環境、そして徹底した衛生管理で、安心・高品質な鶏肉を確保しています。

 「事業を始めた平成16年当初は、戸惑うことばかりでした。」と宮腰社長。それもそのはず、この事業をきっかけに社長に就任するまでは、建設業一筋に従事してきたからです。
 大鰐振興の母体は、ご自身が常務を務める総合建設業・㈱片山組。公共事業の発注が落ち込む中、建設業だけでは雇用が維持できなくなると考え、新事業を模索していました。建設業の延長線上にある産業廃棄物処理業やペレット製造工場などの調査や視察をするものの、「初期投資やランニングコストを考えると断念せざるを得ない状況でした。」
 そんな中で、「天候に左右されず通年飼育できる青森シャモロックの事を知り、付加価値が高いこと、生産効率と資金回転が良いことが決め手となり、この事業に参入する結論に至りました。」畑違いの事業ですが、ポイントがもう一つ。「弊社の資源が有効に活かせて、建設業が参入するには比較的有利でした。」
 建設業の資源を活かす―。「県の地鶏ということで、しっかりとした飼育マニュアルがあるんです。マニュアル通りに生産するというのは、設計書や図面を忠実に守って工事を進めるという点で建設業に通じ、我々が一番得意としているところです。鶏舎や食鳥処理場の建設においては、本業のノウハウや建設機械を活用できます。養鶏も建設も、安全管理が要という点も似ています。」
 スタッフ2名とともに県の関係機関を始め、先駆けて飼育している県南地方の農場や、秋田比内地鶏生産農場に足繁く通って指導を受け、安全・安心につながる衛生管理などのノウハウを習得。同時進行で、周辺住民の理解と承諾を取り付けました。生産地の造成や鶏舎の建設、給排水設備の設置は本領を発揮して整え、まずは16羽の試験飼育を開始。農業生産法人の認定も受け、約1年後には食鳥処理場を稼働させて本格的に「青森シャモロック事業」をスタートさせたのです。

白神山地の東側に位置し、緑と水に恵まれた早瀬野地区にあるおおわにシャモロックファーム 年間15,000羽の青森シャモロックを生産している 青森県が独自に開発した唯一の地鶏。飼育期間は100~130日間

ターゲットへたどり着く手段を模索

初生ビナを買って、マニュアルに従って忠実に飼育する。順調に滑りだしたものの、「ある程度のところまで行くと、伸び悩んでしまったんです。」生産から処理・販売に至るまで一貫して手掛ける中、建設業と相容れない『販売』。「インターネットを活用してみましたが、効果的な方法がわからず、販売チャネルを確立出来ずにいました。」地元展開だけでは限界があり、売れる見込みがなければ生産量も増やせない。販路の開拓が急務と考えた宮腰社長は、指導を受けている県の関係者から情報提供を受け、元気チャレンジに申請。「販路開拓のための金銭的支援も重要ですが、何より販売戦略についてのアドバイスが欲しかった。」と言います。
 採択ののち、資金面の支援とアドバイスを受けて、問題点の把握と改善に動き出しました。まずは、専門バイヤーが集まる首都圏の商談会などに参加。露出を増やすことでダイレクトに販路拡大につながったほか、商品に対するバイヤーの意見や他の出展者による情報提供が、さらなる戦略につながることも。

 インターネットによるプロモーションは、ホームページをリニューアルし、こだわりの安心・安全面を細かく表示し、丁寧な仕事ぶりをアピール。「飲食業界や食肉卸売り会社が一番気にする点を掲載したことで、問い合わせが多くなりました。」さらに、アクセス解析を実施することで、アクセス数が多い地域や顧客層の絞り込みができ、それに伴った販売推進計画が立てられるようになったそうです。

新産業で活気溢れる地域を目指して

異業種参入から約8年。3名で始めた事業ですが、現在は10名が従事しています。着々と伸びてきている業績について、「指導と後押しのお陰です。助成期間が終わってからもアドバイスを頂くことが多くてありがたい限りです。自分たちだけでは無理でしたね。」と振り返ります。自社だけで解決しようとするのではなく、多方面からのアドバイスを聞き入れ、真摯に向き合う謙虚な姿勢が生んだ結果と言っても過言ではありません。
 「今後は、仲間を増やすことを考えています。」と、大鰐町にこの新しい農業を根付かせ、特産品として確立することに力を注いでいくとのこと。
 大鰐町で生まれ育ち、地元の活性化を心から望んでいる宮腰社長。「雇用につなげて、地域を盛り立てていきたいです。」農業・観光業・商工業との連携を図りながら、その思いを推進していきます。

肉質がきめ細かく歯ごたえがあり、ダシがよく出るのが特徴。和洋問わず料理に合うことで、飲食業界からの引き合いも多い

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企業プロフィール

  1. ■社 名 有限会社大鰐振興
  2. ■代表者 代表取締役 宮腰 浩一
  3. ■設立年 平成元年
  4. ■所在地 大鰐町蔵館湯ノ沢4-3
  5. ■電 話 0172-47-9040
  6. ■企業URL http://www.o-wani-shinkou.jp
  7. ■従業員数 10名
  8. ■資本金 1,500万円
  9. ■採択年度 平成20年度下期
  10. ■事業内容 特産地鶏「青森シャモロック」の20,000羽生産拡大構想に向けた販売戦略
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