新商品にかける熱き思い
「コストを抑えて美味しいものを提供する、そのバランスが難しかったです。」と、何度となく行われた試食会を振り返る。「この事業は地域の方々の協力なしでは成り立ちませんでした。」食部門と工芸部門に分かれて進められた事業。どちらも地域の声を集めるため、情報交換の場を設けながら進めた。「みんなの熱意が感じられたことが嬉しかったです。やはり、地元が好きなんですよね。」地域を元気にしたいという思いが溢れていることを再認識したという。
地元の農産物と特産品を活かした商品開発に取り組んだNPO法人かなぎ元気倶楽部。 「人が集まる時、振る舞うのは決まって馬肉料理。この地域にとって、それがおもてなし料理なんです。」と白川理事。そんな地域特性を反映した「激馬かなぎカレー」や、昔ながらの郷土料理をまとめた「かなぎ元気村弁当」などが新たな観光商品として誕生した。
地域に残る食の記憶を再生し伝える―をコンセプトに、地域の人たちを巻き込んだプロジェクト。「農家のお母さんたちにご協力頂き、あらゆる意見を反映させてつくりあげました。 それぞれの家庭の味を一つにまとめるのに苦労しましたが、おかげで観光客からは好評です。」
お弁当は、大手旅行会社とのタイアップによる観光客向けの昼食メニューとしているが、カレーにおいては、同法人が運営する地元の飲食店で食べることが出来る。
デザートに味わいたいのが、長いもの粘りと豆乳が決め手のアイス「金木愛すとろろん」。少し溶けると、長いものようにのび?るアイス。食感もさることながら、豆乳のまろやかさが一度食べたらやみつきになる逸品だ。
さらに、青森ヒバの産地でありながら姿を消しつつあるヒバ工芸品の復活にも力を入れた。しめ縄やリースといった商品の開発だけでなく、ヒバ細工や木工などの技術を習得。地元に伝わる技を体験してもらうためのメニューを開発し、受け入れ体制を整えた。
太宰治生誕の地、津軽三味線発祥の地として全国的に知名度が高い五所川原市金木町で、歴史、文化、地場産品などあらゆる資源を活用し、地域活性化に取り組んできた同法人。 「太宰治や津軽三味線をテーマとした観光商品は大体のものを開発済みですが、もともとこの地域は農業と林業で栄えてきた地域。 今も基幹産業は農業であり、製材所もまだ稼働しています。」次にクローズアップすべき資源は、地域を支えてきた産業とそれによって創り上げられてきた味と技―。 「金木の魅力は、太宰治と津軽三味線だけではありません。もっと地域の魅力を引き出した観光商品が開発出来れば、農業の活性化や地域経済向上につながると考えました。」
「助成事業については日頃から情報収集をしています。」前から気になっていたという元気チャレンジ。NPO法人も助成対象であることを知り、申請に至った。
採択を受けた直後、出向いたのは近くの畑だったという。「農作業をしている方に声を掛けて協力を依頼しました。」と、すぐさま事業をスタートさせた。 「次第に人が増え、地域の方から様々な意見を聞きながら思う存分、情報交換をしました。納得のいくまで試行錯誤が出来たのは、助成金があったからこそ。この取り組みをきっかけに地域の方々との結びつきが強まったことが、
本法人としては一番のメリットです。」地元生産者や企業との交流を深めながら、目標を達成した。
また、当時メニュー開発に携わっていたメンバーの1人を正規雇用することも出来たという。
現在、開発した各商品の活用の幅を広げるため、ブラッシュアップに着手している。 「激馬かなぎカレーは、多くのお店で提供出来るようレトルト品を開発しましたが、店舗ごとのオリジナル性を出せるよう、ベースを汎用型に改良しているところです。」 併せてお土産用のレトルト品開発も進んでおり、アイスを地元の飲食店で提供するためのメニュー開発にも着手している。
「やりたいことはまだまだいっぱいあります。」と白川理事。地域づくりの取り組みに心底やり甲斐を感じている。「今回の事業を通してつながりを持てた方々との交流を大事に、一丸となって地域の魅力を向上させ、地域経済の活性化を目指していきたいと考えています。」
企業プロフィール
- ■企業名特定非営利活動法人かなぎ元気倶楽部
- ■所在地五所川原市金木町朝日山189-3
- ■TEL0173-54-1616
- ■URLwww.kanagi-gc.net
- ■代表者名今 誠康
- ■従業員数28名
- ■採択年度平成24年上期