新商品にかける熱き思い
日本一のりんご産地・青森県。「りんご産業の持続的な発展には、加工用りんごの付加価値を上げ低価格化を抑えることが必要。」という考えのもと、りんごに新たな可能性を見出すことに没頭した。「種の研究から始まり、かまどへ広がりをみせ、カタチになるまで丸4年かかりました。」と、試行錯誤を重ねた日々を振り返る。「協力していただいた方々の名前を汚すわけにはいかない。」と、公的機関で徹底的に成分調査や検査を行い、満を持して商品を世に送り出した。
まるでゼリーのようなぷるっと感―。思わず口に運びたくなる「あっ!ぷるるんボール」は、㈱やまと商社が開発した洗顔用石けん。
青森県産りんごを使った「りんご心皮」と「あおもりPG」が配合されており、洗顔後のお肌はしっとりつるつる。肌にやさしい無添加商品だ。
「りんご心皮」とは、りんごの芯から種とつるを除いた「かまど」と呼ばれる部分を乾燥粉砕したもの。「粉末化する独自の技術を確立出来たことが事業成功のポイントです。」と岡田社長。未利用部位に着目し、同社が世界で初めて粉末化に成功した。
高い保水力を持つ天然素材に加えて、同じく保水性に優れた「あおもりPG」も配合。 県産素材を活用した同商品は、平成25年夏から販売を開始している。オンラインショップやあおもりPGのアンテナショップなどで購入することが可能で、評判も上々。今後ますます、販路拡大を図りたい考えだ。
りんご心皮
青森県産業技術センター弘前地域研究所と共同で研究開発。粉末化に成功したのち、表示名を日本では「りんご心皮」、アメリカでは「カーペル」と登録した。
加工用りんごの産業廃棄物ゼロを目指し、未利用部位の活用に向けた技術研究と用途開発をスタートさせたのは平成20年のこと。部位と部位をつなぐヒンジ専門メーカーとして市場調査・開発・設計・製造・販売まで一貫したシステムを構築してきた同社が、成長戦略の一環として取り組んだ新事業だ。 「産学官が連携し、青森県の主力農産物であるりんごを丸ごと活かすプロジェクトで、最初に注目したのは種でした。」
ヒンジで培われた技術を、加工用りんご残渣を分別するための機械開発に応用。熱をかけずに、割れることなく種を取り出すことに成功したのち、「りんご種子油」の搾油を実現した。こちらは現在、特許申請の準備とともに、用途を検討中だという。
同時に進めていた種以外のかまど部分の成分調査では、「予想以上の栄養素や有効成分が含まれていることがわかりました。」そこで、化粧品や健康食品向けの素材としての可能性を模索。 何百項目にもわたる農薬残留検査をパスし、特徴を活かせる商品を試作しながら、製品化を目指すことになった。
畑違いのチャレンジ―。「素人が自社資金だけで行うには、壮大過ぎる事業でした。」と岡田社長。新産業を創出することが出来れば、雇用が増え、地域経済の発展にもつながると、助成金の活用を考えていた。
そんな時、ふと聴いていたラジオで元気チャレンジの話題を耳にし、すぐさま調べて申請の準備を始めたという。
採択を受けた後の事業展開において、「金銭面でも助けられましたが、各方面からの協力が得やすくなりました。公的な助成が対象となる事業、意義ある研究開発であるという見方になり、信頼につながったのだと思います。」と、助成事業活用のメリットを語る。
同商品の販路拡大もさることながら、「消費者の商品に対する安全・安心志向が高まり、天然素材が脚光を浴びています。特に植物性素材のニーズが高い。 りんご心皮は、健康美容産業の創出と発展に貢献出来ると思います。」時代に即した植物由来の天然素材。すでに、県内外の企業が興味を示しており、問い合わせも増えているという。 今後は、スキンケアやヘアケア商品など様々な製品への活用が期待される。
また、「りんご丸ごと活用」を目指して、「残りのつるの活用法も考えなければ。 “りんごの新しい可能性見つけました”をキャッチフレーズに、これからもりんごを丸ごと活かす展開を推し進めていきます。」とのこと。さらなる世界初の技術が誕生するかもしれない。
企業プロフィール
- ■企業名株式会社やまと商社 青森工場
- ■所在地五所川原市金山字亀ヶ岡46-14
- ■TEL0173-38-3230
- ■URLwww.yamatofirm.co.jp
- ■代表者名岡田 茂
- ■従業員数10名
- ■資本金1,500万
- ■採択年度平成23年上期