新商品にかける熱き思い
開発に費やした1年を「試行錯誤の連続でした。」と語る福士社長。「なんせ効果は野菜に聞かないとわからない。生育するまで待って、作り直してはまた試すの繰り返し。」しかし、断念を考えたことは決してなかったとか。「LED照明の技術は日々革新的に進歩しています。だからこそ、先駆者として技術を追求する必要がある。」そのためには、情報が命という。国内はもとより海外へも飛び、日頃から情報収集を怠らない。時代と市場のニーズに合わせたスピードで、大市場に挑む。
ワイヤーハーネス製造・加工、表面実装、高品質LED蛍光灯を手掛ける桜総業㈱。中でもLED照明の技術革新は近年目覚ましい。 LED照明は、従来の白熱灯や蛍光灯に比べて寿命が長く、省エネルギー。東日本大震災以降、節電意識の高まりにともない市場も急成長している。
同社が助成を受けて新たにチャレンジしたのは、植物用工場で葉物野菜に最適な光源となる直管型LED照明の開発。 従来のパネル型とは異なり、直管型にすることで、工場で使用している既存の蛍光灯と交換するだけで導入出来るのがポイントだ。 導入コスト低減に加えて、「運用コストは蛍光灯に比べ約半分に抑える事が出来ます。」と福士社長。植物工場で使用される照明は膨大な数にのぼり、蛍光灯の場合、発生する熱を下げるための冷房も必要となることから、消費電力はかさむ一方。 その点、LED照明は余分な熱が発生することはないため、余分な電力を使うこともない。さらに実験の結果、「栽培期間を短縮出来るため、回転率が上がり収穫量アップが期待出来る。」ことがわかったという。
「これまで八戸工業大学と共同で、LED照明機器を開発してきました。LED照明は、放熱設計がポイント。 今回も八戸工業大学からのアドバイスの下、葉物野菜の生育に適した光源の条件を明確にし、開発に至りました。」波長の選定や光源部の設計を経て、試作をしては植物工場で試してもらう工程を繰り返して効果を実証した。
同社は数年前からLED照明機器の開発を手掛けている。平成22年には自社ブランドを立ち上げ販売を開始。その売り上げ本数は大手メーカーを凌ぐ勢いだ。
確たる技術力を武器に、注目したのは約60億円と言われる葉物野菜市場。世界的な食糧不足への懸念や、国内においても震災以降は放射能汚染の恐れや風評被害が深刻になっていることから、 「安心・安全な農業への需要が増大し、通年で安定生産が可能となる植物工場が必須となります。調査の結果、東北にも遊休のクリーンルームが相当あることがわかりました。」
制御された工場での農作物生産が活発化すると見て、いち早く動き出した同社。 既にクリーンルームで葉物野菜の水耕栽培に着手し成功している、福島県の企業・会津富士加工㈱に協力を依頼。実証実験の提携を結んだのち、事業がスタートした。
「中小企業は新しいことにチャレンジしたくても、開発資金を調達するのが難しいのが現状。新事業展開、技術力向上を目指すうえで、助成はありがたいです。 助成金を活用して良いものを開発したら、市場が拓ける。それが雇用の促進や産業の活性化、青森県の経済発展にもつながっていくと考えています。」と話す福士社長。新たなLED照明を開発するにあたり、新規雇用も生み出した。 採用された2名の技術者は、LEDの選定、回路設計、基板設計、試作組立などを担当し、現在も継続雇用となっている。今後、市場参入を果たし量産が始まれば、さらなる雇用が期待出来る。
また助成金を活用したことで、提携先の会津富士加工㈱にも長きにわたって、開発に必要なテスト栽培と分析、評価をお願い出来たという。
葉物野菜を栽培する植物工場における運用コスト低減につながる直管形LED照明の開発で、今回の事業は一旦ゴールを迎えた。 今後は、低カリウム野菜の栽培に最適な光源を目指し、同製品のブラッシュアップを図りたい考えだ。また、「葉物野菜以外の果物や花などの栽培に適した製品の開発につなげたい。」と、既に新しいテストも始めている。
徐々に様々な分野・用途のLED照明機器が登場する中、先陣を切って技術を確立し、「青森県の雇用促進に貢献出来る事業活動に努めていきたいと考えています。」
企業プロフィール
- ■企業名桜総業株式会社 青森工場
- ■所在地八戸市北インター工業団地2-3-25
- ■TEL0178-21-6391
- ■URLwww.sakura-sohgyo.co.jp?
- ■代表者名福士 信雄
- ■従業員数195名
- ■資本金3,000万
- ■採択年度平成24年上期