新商品にかける熱き思い
「骨格の違いをどうカバーするかというところが一番のネックでした。現地で普通のインナーを買ってきて、バラしながら研究したんです。本当に苦労しました。」と誕生秘話を語る平内社長だが、そこはこの道35年のベテラン。技術と意地で乗り越えた。カラーバリエーションなどの要望にも応え、現地の意向も反映させたという。細かい要望にも応えられることが中小企業の強みだと考えている。
主に女性用インナーの受注生産をメインに工場を稼働させてきた八戸市のエポックインターナショナル㈱の新たなチャレンジで生まれた商品は、ブライダル用のインナーだ。企画デザインから製造まで一貫生産し、台湾や香港といった海外向けに販売する。
これまでにもブライダルインナーの製造経験がある同社だが、「同じアジアとはいえ骨格に違いがあるため、これまで日本の女性向けに作っていたのものとは規格が違います。」と話す平内社長。決定的な骨格の違いにも着目し、現地の女性に合わせた仕様になっている。
国内で販売されている有名ブランド商品であっても、素材は中国を始めとする東南アジア製のものが多い中、「この商品はレース以外の素材は全て日本製です。」と、素材も製造も日本製というクオリティーの高さがウリだ。「日本製の信頼度は高く、興味を示してくれた企業と商談を進めているところです。」親日家が多いといわれる台湾を皮切りに、目下販路を開拓中だ。
ブライダルインナーって?
花嫁がウエディングドレスやカクテルドレスの下につける専用インナー。ドレスをスタイル良く着こなすために、ウエストやバストラインに補正機能がついているものがほとんどで、ドレスに合わせたボディメイキングが可能。セミロングラインブラ、コルセット、ウエストニッパー、ショーツ、ドロワーズなど様々な種類があり、通常のインナーの相場よりも高価なものが多い。
「これまでは下請け100%だったため、元請けの動向に左右されて影響を受けることがしばしば。経営安定のためには、自社ブランドの商品開発が欠かせないと常々考えていました。」そんな時にアジアの結婚式事情を知ったことがきっかけで、自社ブランド立ち上げへの思いが加速したという。 台湾や香港、シンガポールでは近年、日本のイベント的な披露宴を取り入れる富裕層が増えているが、ブライダルインナーの概念がない。しかし、それをチャンスと捉えた平内社長。「特別な日に身につけるものだからこそ、高品質な日本製インナーの需要がきっと出てくるはず。」と、商品開発の出口となる販路を模索。ビジネスマッチングツアーに参加し、現地のブライダル企業との商談にこぎつけると同時に、初となる自社ブランドの試作品づくりをスタートさせた。
21あおもり産業総合支援センターのメールマガジンを購読していたことで元気チャレンジを知り、申請した同社。採択されたことで、商品開発のスピードが上がったという。「助成金は、パターンの制作費に充てました。外注できたのは非常に大きい。向こうの女性の体型に合わせたパターンが完成するまで半年かかりましたが、自社でやっていたらもっと時間がかかっていたと思います。」すでに販路の見込みをつけ、商談を進めていた同社にとって、試作品の完成が遅れることは命とりになりかねない。「だから私は、助成金で時間が買えたと思っているんです。」※パターン…原型をおこす型紙
現在のところ取引は台湾企業のみだが、「次は香港やシンガポール、そして中国を考えています。早々に、展示会などへの参加を検討します。」早くも次の構想が頭の中にあるようだ。
また、「現地の企業と話しをしていくうちに、ブライダルインナーだけでなく、シルバー用の高級インナーの需要もあることがわかりました。」と、情報収集を欠かさないところが同社のさらなる発展を予感させる。不況の波にも耐えられる経営基盤構築をとスタートした本事業が、東南アジアを中心に新たな広がりを見せるかもしれない。「海外に販路を見い出だせれば雇用の安定につながり、地域の活性化を図れると考えています。」と、地元雇用にも積極的に乗り出す考えだ。
企業プロフィール
- ■企業名エポックインターナショナル株式会社
- ■所在地八戸市城下2丁目22-13
- ■TEL0178-43-0571
- ■代表者名平内 國俊
- ■従業員数26名
- ■資本金1,800万円
- ■採択年度平成25年度下期