新商品にかける熱き思い
青森と和栗ー。縄文時代からの文化的つながりを軸にしたコンセプトで商品開発がスタートしたが、方針転換が必要な場面も。「その為の市場調査であり、そんな時に心強いのが助成金の存在。いろんな事を試せるし、やり直しがききますから。」モノづくりにおいて失敗はつきもの。「失敗してもいいんです。最終的にベストな形に仕上がって結果が出せれば。」と、柔軟かつ冷静な判断でモノづくりに臨んでいる。
さかのぼること約5,000年前ー。青森市の三内丸山遺跡周辺には、栗林が広がっていたことが確認されている。建築材として、また貴重な食料資源として、古代人の生活に栗は欠かせないものだったようだ。遥か昔からこの地に根付き、現在でも行われている栗栽培。その県産和栗を活用して、青森市の菓子卸業・(株)富士清ほりうちが新スイーツを開発した。
「青森和栗の米粉仕立てしっとりバウム」は、上品な和栗の食味と香り、程良いしっとり感が自慢のバウムクーヘン。渋皮ごとペースト状にした和栗が生地に練り込まれている。「栗の味がしっかり感じられると好評をいただいています。」と倉田社長。バウムクーヘンとしては少し軽さがあるが、物足りなさを感じないのはまさに和栗の味わいのおかげだ。また、米粉を配合していることで、もっちりとした食感も楽しめる。
一般発売を前にして、世界中から食のプロが集まるアジア最大級の食の祭典「FOODEX JAPAN 2014」に出品し、高評価を獲得。平成26年9月、満を持して販売を開始した。
青森市内の観光施設、駅や空港をはじめ、お取り寄せサイトでの販売も行っており、売れ行きも順調だ。「おみやげ品として活用していただき、県産和栗を通して青森をPRできたら。」と期待を寄せている。
同社は以前にもスイーツ開発の実績がある。「青森といえば、りんご。最初のスイーツ開発は、県産りんごを使ったゼリーでした。」第2弾となる今回は、地元企業が取り扱う和栗ペーストを何かに活用できないかと相談を受けたことが、取り組みのきっかけだったという。「県産の和栗について興味を持ち調べたところ、今でもこの地に栗が脈々と息づいていることや活用法がないために収穫さえされていない現状を知り、和栗の消費拡大のためにもと新たなスイーツ開発に乗り出しました。」縄文と和栗を掛け合わせることで、りんごに続く新たな注目素材になり得ると確信し、すぐさま動き出した。
「助成金を使わせてもらう以上、結果を残すことが大事。」というのが倉田社長のポリシー。その責任感を裏付けるように、「これならいけるなというところまで形を作り、ブラッシュアップの段階で申請をした。」という。
採択後は助成金を活用して、「全国展開のための市場調査にも力を入れました。パッケージデザインの開発にも助成金を充当していますが、一度作り直した経緯があります。」展示会などでのアンケート調査の結果を踏まえて、当初予定していたデザインを一新したという。「商品自体がいくら上質で美味しくても、手にとってもらえなければ結果にはつながらない。」という思いから、市場や消費者の声を取り入れる思い切った決断に至った。「それができるのも助成制度の大きな魅力です。」と、臆することなくコンセプトを見直し、一番良い形で商品を世に送り出すことができたようだ。
「青森産の和栗」という意外性と目新しさが手伝ってか、「思っていた以上に売れ行きは好調です。」と笑顔の倉田社長。これまでは「縄文×和栗」というコンセプトのもと三内丸山遺跡近郊の農園で採れる和栗のみを使用してきたが、数量を安定的に確保するため、「最近は弘前地域で栽培されている和栗も使っています。」とのこと。「最初に打ち立てたコンセプトにこだわるのも大事ですが、おいしいものが提供できればお客様にも喜んでもらえる。そうやって進化していくのもいいと思っています。」というのが今の方針だ。新商品開発に込められた思いは、今まで目を向けられていなかった県産和栗の消費拡大と新素材を通した青森のPR。そこは決してブレてはいない。そして今回誕生したバウムクーヘンだけでなく、「すでに和栗を使った次の商品の試作を始めています。」と、チャレンジは続いているようだ。同社のモノづくり力と県産和栗のポテンシャルに期待したい。
企業プロフィール
- ■企業名株式会社富士清ほりうち
- ■所在地青森市野木字野尻37-279
- ■TEL017(739)1234
- ■URLhttp://www.fujiseinet.co.jp
- ■代表者名倉田 昌直
- ■従業員数136名
- ■資本金1,000万円
- ■採択年度平成25年度下期