新商品にかける熱き思い
平成23年4月に前身である有限会社forteの取締役社長就任して以降、地域が抱える課題を解決する商品を開発してきた葛西社長。「雇用創出や人材育成も重要な地域課題。」と捉え、積極的に地元出身者を雇用し地域に貢献している。「青森版インダストリー4.0をおこして地方発世界へ!」を合言葉に今日も突き進む。
「チャリ旅」という言葉が耳についてきた昨今。自転車を利用して名所を巡るプランを打ち出している観光地も増えている。自転車愛好者は全国で300万人ともいわれ、エコでクリーンな趣味としてこれからますます熱を帯びていくと予想されている中、活気づくサイクリング市場に青森市の(株)フォルテが開発した「VOCE-rable(ヴォーチェ・ラブル)」がデビュー。インターネット販売をメインに展開し、すでに初回限定数2,000台が完売している。 本商品は、自転車用ヘルメットに搭載してスマートフォンとBluetooth接続することで通話をしたり音楽を聴いたりすることができる画期的なアイテム。ハンドサインでしか仲間とコミュニケーションを図ることができないもどかしさを解決し、仲間と会話をしながらサイクリングを楽しむことができる。 使い方は簡単で、自分のスマートフォンとペアリングしたら、あとは耳元のボタンを押すだけで操作することができる。iOSの「Shiri」やAndroidの「OK Google」といった音声認識ソフトにも対応しているためハンズフリーでの操作も可能だ。 最大の特徴は、音楽や会話を骨振動で聞くことができる「骨伝導システム」を採用していること。
先端はこめかみの少し下の部分にあたるようになっており、「耳」ではなく「骨振動」で音を聞く仕組みだ。同社の葛西社長は、「耳を塞がないので、周囲の音を併せて聞くことができます。周りの音が聞こえているので走行の安全性に支障はありません。」と、高い安全性能をアピール。また、本体上部にはライトが組み込まれ、ボタン一つで点滅させることができるので非常時や夜間走行も安心。今後は、スマートフォンアプリと連携することで使用者の脈拍などのバイタルデータを取得し記録することができる機能も実装予定とあって、体力づくりがメインのサイクリストにとっても必需品となりそうだ。
同社は平成22年に、GPSやビーコンを活用した移動体通信システムを開発。翌年には、電動アシスト自転車にシステムを搭載させて音声ナビでガイドを行う「ナビチャリ」を生み出した。知らない土地でも気軽に観光を楽しむことができるデバイスとして、数々の自治体に導入されている。 そんなナビチャリサービスを展開していく中で、「導入先や利用者からナビやガイドだけでなく、自転車に乗りながら仲間とコミュニケーションを図りたいという要望が多く聞かれるようになった。」と話す葛西社長。課題を解決するため、国の補助金などを活用し「ヘルメット搭載型骨伝導通話システム」の技術開発に着手。岩手大学や大阪電気通信大学と共同で研究を進め、設計・開発は社内で取り組んだ。平成27年、プロジェクトは最終段階に。最終試作機の開発と販路開拓を目的として元気チャレンジに申請し、商品の完成を目指した。
「新商品を開発するには多額の費用がかかりますから、自社の投資額を少しでも抑えられるのはありがたい。」と話す葛西社長は、助成制度を「スタートアップする時の応援ツールですね。」と位置づける。 元気チャレンジの活用は3回目となる同社。今回は販路開拓費として展示会出展に係る費用にも充当した。「マーケット調査や展示会でヒアリングしているうちに違う市場も見えてきた。」と、商品活用シーンの幅を発見することができたという。
「今後は自転車文化の盛んなアメリカやヨーロッパに向けて展開していくつもりです。」と道筋を立てている葛西社長だが、見据えているのはサイクリング市場だけではない。すでにスキーやスノボード、ランニング時などの活用を見込んで、同商品をコンパクトに改良したヘッドセット商品「VOCE-rable egg(ヴォーチェ・ラブル・エッグ)」と、工事現場や製造工場でトランシーバーと接続して使用する産業用タイプの発売も開始した。 そしてさらに、平成29年春には新技術を搭載したハイスペック商品も発売を控えているという同社、まだまだ躍進が続きそうだ。
企業プロフィール
- ■企業名株式会社フォルテ
- ■所在地青森市古川3-22-3 古川ビル3F
- ■TEL017(757)8033
- ■URLhttps://www.forte-inc.jp/
- ■代表者名葛西 純
- ■従業員数14名
- ■資本金4,100万円
- ■採択年度平成27年度上期